今回お世話になりました工事は、写真の軒裏右側のプリント化粧合板張りの野地板を張り替えることが主目的の工事でした。
こちらのお宅では、軒先裏側を下から見上げると、写真の通り2種類の化粧野地板が使い分けられていることが確認できます。
右側が、家の玄関側(南側)にあたる軒先で、こちらではプリント化粧合板が化粧野地板として使用されています。
写真ではわかりにくいのですが、合板基材の接着部分が剥がれてしまい、あちらこちらで浮き上がっていることが確認でき、手でさわるとフワフワして直ぐにでも壊れる(いや壊れている)状況でした。
最近お伺いするお宅で非常に多い現象ですが、この地域特有の霧も影響しているのでしょうね。まあ、そもそもあまり長年使えるような品質ではなかったのでしょうが。
また、左側の野地板部分は、杉板が化粧野地板として使用されていましたが、道路側でもあり、経年劣化もともなって真っ黒に汚れているように見えるものの、杉板そのものはまだまだしっかりとしていました。
屋根の上に上がってみると、ご覧のとおり、築年数相応に汚れたりはしていても、まだまだ現役で頑張ることができるしっかしりた瓦屋根でした。
棟のあたりが赤茶色で汚れているのは、昔よくつけられていた鉄筋が錆びて、その錆が雨で屋根瓦の上にながれ、染み付いてしまったものです。
この鉄筋、屋根が汚れるだけで、その効果のほどは?なような気がします。
さて、今回の工事の主目的は、経年劣化したプリント化粧合板の野地板を張り替えることなのですが、当然野地板を張り替えるということは、一度屋根葺材であるこの和瓦も解体撤去し、野地板の張替え後に再び葺き直す工事を行うこととなりました。
ご覧の写真は、既設の屋根瓦と化粧野地板をすべて解体撤去した状況です。
ちなみに瓦屋根は、化粧野地板部分のみの解体撤去でも工事可能なのですが、ほとんで解体することを考えると残りの部分も含めすべて一度解体し、葺き直したほうが、綺麗に仕上がりますし、工事もしやすいですね。
もちろん作業量が増えますので工事費が、少し高くなりますが、できればこちらをお勧めしたいと思います。
上部の板のように見えている部分は、杉の荒野地板の上にアスファルトルーフィングが敷き込まれた部分ですが、葺き土でこんな板のような色に汚れて見えています。
今回は、劣化したプリント化粧合板の化粧野地板が撤去されて垂木が見えているこの部分に杉の化粧野地板を張り替えることになります。
当初は、解体して劣化、損傷が酷い箇所、部材などが見つかれば撤去交換する方向で進めていましたが、経年劣化相応に汚れたりはしていても、それほど酷い部分はありませんでした。
どちらかというと、まだまだ健全な状態と思いますが、お施主様と相談させていただいたところ、軒先に取り付けられている広小舞(写真下部)は、この機会に交換しようということになりました。
ということで、既存の広小舞を解体撤去し、米松の新しい広小舞(軒先先端に取り付けられた断面三角形の部材)を取り付けて、杉の化粧野地板がどんどん張られていきました。
大工さんの仕事は、横で見ているとほんと楽しそうです。(ホントは、何かと大変ですが・笑)
屋根面側は、野地板としては瓦の下に隠れてしまう部分のでカンナもかかっていない、いわゆる荒野地板と同じ状況なのですが、さすがに化粧野地板の裏面ということで、節もほとんどなく、とてもきれいな状態でした。
昔、プリント化粧合板がでてきたころは、見た目が綺麗だし、希少性、目新しさもあったのか、軒裏、特に今回のように玄関先などの目立つ部分によく使われていることが多いような気がします。
しかし、やはり品質としては今ひとつなものが多く、数十年の時を減ると、どこでもぼろぼろに劣化している状況です。
こちらのお宅でも無垢の杉板が張られた部分は、汚れはしていても、部材としてはなんの問題もなく機能しているのに、見た目優先で作られたところが、ふわふわボロボロな状態。
ほんと、部材の品質、選択と工事の良しあしは、ほんの数十年(家ので時間では)でわかってしまうので、十分気をつけないといけないですね。
さて、張り上がった杉の化粧野地板を実際に軒裏から見上げてみるとこんな感じになりました。
とても綺麗になったと思いますが、いかがでしょうか?
無垢の杉板でもありますので、これから時間を刻みこんでそれなりに汚れたりはしていくのでしょうが、適切にメンテナンスいただいているこちらのお宅ではいい風格がでてくるものと思います。
それにしても、野地板ってよくよく考えてみると、屋根の裏側、目線よりも高いところにありますし、普段気にも止めないような部分ではありますが、こういうところに構造部材としても化粧部材としても細心の注意をはらって作って来られた昔の方々は、すごいなあと思いますし感謝です。
さて、主目的だった化粧野地板の張替工事が完了したので、ここで雨が降って、雨漏りさせては大変と、急いで屋根瓦の復旧工事に着手します。
まずは、万が一の瓦屋根からの漏水に備えて下地のルーフィングを張っています。
昔はトントンと呼ばれる板、そしてアスファルトルーフィングが主流でしたが、最近は様々な素材をつかって新しい製品が次々と生み出されています。
今回は、瓦葺のため、横桟を取り付けますので、そこに水が溜まらずすみやかに排水されるよう縦桟の役割、機能を持つようにエンボス加工されたオレフィン系のルーフィング材を使用しました。
釘穴の止水性など、商品によって課題もあるようですが、年々良くなってきていることは間違いなさそうです。
ルーフィングの施工が終わると、墨出しをした上で正確に横桟を打っていき、ステンレス製の谷樋を取り付け、止水材を取り付けたりして準備が整えば、一気に瓦を葺いていきます。
今回は、既設材の再利用なので、職人さんも新品を使用するより手間隙かかったとは思いますが、手際よく、正確に施工していただきました。
左の写真が、屋根瓦葺きの復旧工事が完了した状態のものです。
一見工事前と何も変わっていないようにも見えますが、棟の錆びた鉄筋はなくなり、代わりに下地のなんばんと銅線でしっかり補強されました。
谷樋は、鉄板からステンレス製に交換されて、一安心。剥がれた面戸しっくいも綺麗に塗り直されました。
ちなみに、既設瓦の再利用といってもすべての瓦がそのまま元の位置に戻せるわけでもない(やればできるでしょうが)ですし、破損している瓦などもありましたので、同形状、同色の和瓦を探して、少し足したり、交換したりしながら復旧させていただきました。
また、ついでにと言うわけではないのですが、2階の窓上に取り付けられた庇の野地板も交換させていただきました。
こちらもプリント化粧合板が張られていましたが、同じくぼろぼろと表面が剥がれて汚くなっていたので、この際にと。
こちらは、焼杉板が数枚あったので、それを使用させていただき、屋根もガルバリウム鋼板で葺き替えました。
今回の工事の主目的である野地板の張替工事を行うためには、屋根瓦の撤去復旧が伴うことになってしまいましたが、経年劣化で浮きやずれもありましたし、面戸しっくいも剥がれ落ちていたので、タイミングとしては良かったのではないでしょうか。
また、既存の屋根瓦は土葺で葺かれていたのですが、今回の改修の際に葺き土はすべて撤去し、瓦桟と釘打ちなどにより葺かれることとなりましたので、屋根の軽量化にも貢献しているものと考えます。
屋根の一部分だけなのですが、それでも地震の際には少しでも有効に働くことでしょう。
このように、大切なわが家、ご自宅に少しづつ手を入れていただきながら、末永く使い続けていただくお施主様に感謝しながら現場をあとにさせていただきました。
家は建てた後もいろいろと手がかかりますし、お金もかかりますが、傷んだ箇所などを放置し続けると、取り返しがつかなかったり、修理費が高額になることが多いです。
何か気になるところ、心配になるところがあるときは、遠慮なく専門家にお問い合わせいただければいいかと思います。
弊社も含め、あまり、ただ働きばかりというのは辛いですが、必ずすべて工事につながらないといけないとも思っていない方が多いかと思います。簡単な相談程度なら、快く引き受けてくださるでしょう。
弊社もよくご相談を受けてますが、すぐに工事や補修が必要ないと判断できる場合は、その旨正直にお伝えして、お施主様のご判断にお任せしております。
お施主様が適切にご判断いただけるよう、できるだけのアドバイスをさせていただきますので、何かありましたら遠慮なくお問い合わせ下さい。
それにしても、今回は天気予報で雨の予報や台風が近づいているとされていたので、気が気でなかったのですが、ほぼ晴天のいい天気の中で無事お仕事させていただきました。
お施主様、そして急な依頼にもかかわらず現場で頑張っていただいた職人の皆様に感謝です。ありがとうございました。
屋根の葺替、改修などに関するお問い合わせも遠慮なくお問い合わせください。
中川住研三田営業所 TEL.079-568-0375 まで。
篠山市、三田市、西脇市、加東市、丹波市、神戸市北区周辺のお客様の場合、比較的に早めにお伺いすることが可能です。