草葺安全屋根改修工事のながれ‐その2

茅葺屋根_02

さて、今回は草葺安全屋根改修工事のながれ‐その2です。

 

前回にも少し触れていますが、この草葺安全屋根と呼んでいる金属板による改修工事では、基本既存の草葺屋根(茅葺屋根)を解体撤去することはありません。

 

つまり、屋根の茅などは現況のまま金属の屋根で覆われしまうことになります。

 

ただ、屋根の形状を整えるために軒先の茅を一部刈り込んだり、棟を綺麗に作るために棟木などを解体撤去することはあります。

 

 

また、茅葺屋根全体を棟から軒先まで一枚の面で葺くこともあれば、軒先付近で一段の区切りをつけて、すぐその下から軒までを別の屋根面として葺くことがあります。

 

これは、茅葺屋根の状態の時から、瓦葺きなどで行われていることもありますが、今の建物で言えば庇の大きなようなもで、基本建物の4面についていることが多いと言えますが、建物の形状や田舎でよく見られる納屋や蔵との関係で2面・3面であったり、南面だけということもあります。

 

この一段区切りがついて角度などか変わる形で葺かれた屋根を錣屋根(しころやね)と呼びます。漢字で書けと言われればご覧のとおり見たこともないような字なのでとても私では無理です。

 

また、「しころ」と言われても今の生活の中ではなんのことやら?というのが普通のことだと思いますし、現在の住宅や建物の中でこういう形状の屋根がつくられることは少なくなっているでしょうね。

 

ちなみに、ウィキペディアには、この「しころ」の説明が下記のように書いてありました。

 

(しころ)とは、頭巾などの下部に布やなどを垂らし後頭部を保護する覆いのことで、建築では板に段をつけて並べたもの「羽板(はいた)、鎧板(よろいいた)」のことを「錣板(しころいた)」ともいう。これを応用し、の屋根板を羽板の要領で葺いたものを「錣庇(しころびさし)」という。」

 

ということで、鎧、兜のデザインからきているのだと聞いて、時代劇なんかを思い出して少し納得。建物の屋根と時代劇、なんか面白いです。

 

さて、今回写真を掲載させていただいているお宅では、このしころ屋根が採用されています。

 

もともとの茅葺屋根が少し傷んでいたのと、屋根の改修以外に建物そのものが全面的に改修されたので、このしころと呼ばれる下屋根が新たに設置されました。

 

ただ、予算の都合や建物本体の構造などから、軒の出の寸法などはあまり無理して出されるようなことはありませんでした。出し桁や、軒先に柱と軒桁を設置して軒の出を大きくし、かっこ良く仕上げるということも出来たのですが、ここでは無理せず合理的にといった感じです。

 

しころの部分は、新しい化粧垂木・野地板で施工された上にいぶし瓦が葺かれています。工事前の雰囲気とはずいぶんと変わっていることがよくわかります。

 

そして、この写真でよく分かるのは、茅葺屋根を覆う形で設置された金属板屋根の下地部分です。

 

格子状に木材で構成されたこの下地は、茅葺屋根から浮き上がった状態で組まれています。これは、現況の茅葺屋根は経年劣化も傾いたり凸凹しているのが当たり前であり、今後も多少変化することもあるので、茅の下にある構造部材で支える形で新しい屋根下地を構成しています。

 

もちろん、この下地は同じ金属板で葺き上げるといっても、その施工方法により大きく変わってきます。基本は同じですが、下地は少しづつ変わるので、当然の下地の施工に入る前には、仕上げの屋根葺材、工法が確定していることになります。

 

さて、ここまで出来上がれば、あとは屋根葺材を施工するだけといった状況のようです。こちらのお宅では、これから金属成形板で葺かせていただくことになります。

 

つづく。

 

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