中古住宅、販売時の診断義務化 活発な取引促す
政府・与党が法改正へ
2015/4/27 2:00日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H12_W5A420C1MM8000/
近年、中古住宅の流動化、空き家問題などに注目が集まる中、4月27日付日本経済新聞電信版に「中古住宅、販売時の診断義務化 活発な取引促す 政府・与党が法改正へ 」という記事が掲載されていました。
記事によると、政府・与党は買い手がつかず売れ残る中古住宅の市場活性化に本格的に乗り出すようです。
その対策の一つとして「専門家が劣化状況を調べる住宅診断を徹底し、仲介業者に販売時の説明を義務付ける」とされています。これは、実現すれば大きなインパクトがありそうな気がします。
中古住宅流通時の住宅診断、いわゆるインスペクションは、欧米で広く普及しており、近年日本でも注目は集まりつつも、なかなか普及してこなかった現実があります。
インスペクションは、専門家(単に不動産の取引業者とか施工業者とかではない)が、住宅の耐久性や落下状況などを、目視や一部簡単な検査機器などを使用して、対象物件を第三者の視点から点検する仕組みです。
ただ、日本では、中古住宅の購入者のうち、住宅診断の利用率は1割に満たないとする統計もあるようです。
今回、この住宅診断の推進により、購入後に欠陥が判明するケースなどを防ぐとともに、合わせて販売情報も適切に開示することなどを契約前に確認する重要事項説明書で義務付けることで、安心して住宅を売り買いできる環境を整えたいようです。
インスペクションの活用は、買う側の安心感を高める狙いとともに、売る側にも売り損ねていた中古住宅の販売拡大が見込めるなどのメリットがある。また、双方にとって、売買後のトラブル防止やリスクの軽減に役立つことになるでしょう。
このような中古住宅の流通促進に注目が集まっている背景には、欧米と比較して、中古住宅の取引状況が活発ではないことと、日々深刻さを増し続けている空き家問題への対策の必要性があるのでしょう。
日本では、通常20~25年程度で住宅(建物部分)が無価値(資産価値がほぼゼロ)と評価される慣習があります。約40年で900兆円弱を投資したが、実際に資産となっている評価額は400兆円弱と、なんだかとても無駄なというかおかしな状況に落ちいいっているのではないかとさえ思えてしまいます。
ちなみに、米国では評価額が投資額を上回っている状況のようですし、住宅投資に占めるリフォームの割合は、たった3割弱と英国などの半分程度のようです。
適切に新しい建物に更新されていくのは大切なことですが、未だにある新築神話の呪縛の中から抜け出すことが日本でも必要になってきたようです。
一部若い人たちには、好むと好まざるとにかかわらず、空き家の有効活用やシェアハウスなど、さまざまな暮らし方が取り入れられてきていますが、今後は古いものも大切に使い続ける、本来の日本人の暮らし方が見直されてくるようになればと思います。
さて、法律が整備されただけは、なかなか世の中は変わりません。特に不動産の流通やインスペクションへの信頼性の向上と確保は不可欠の課題となってきます。
現在、日本では一部の建築士事務所などが国土交通省の指針に基づき住宅診断を手掛けていますが、まだまだ法律や基準も未整備状態であり、第三者として適正な技術のもとに診断、インスペクションを実施できていない業者も存在しているようです。
今後の需要拡大に伴い、検査能力が高い事業者を多く確保する必要があり、政府は研修制度の拡充も検討するとのことですが、ぜひ、単なる検査能力の確保や研修にとどまらない、倫理観をもったインスペンション事業者、検査員の育成に取り組んでいただきたいものです。
なお、自民党などは、5月に活性化策をまとめ、来年の通常国会に宅地建物取引業法改正案を提出する考えのようです。
【参考】
2015/4/27 3:02日本経済新聞 電子版
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS25H12_W5A420C1MM8000/?dg=1
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